みを伝えるということ

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患者からとってきた細胞とか臓器のカタマリをあれこれ検索して、「細胞を見た結果」を書く。このとき、あたりまえのことなんだけど、見たものをどう書くか、というのがけっこう大事である。

Q. ゾウを見たときに人にどう伝える?

A.

「大きい」

「鼻が長い」

「肌が灰色でごつごつ」←こんな言い方する人いるか?

「パオーって言う」

「なんかこんな感じ(身振り手振りでゾウらしさを示す)」

「具体的に数字とかを使う」

今いくつか書いてみたけれど、これを読んだ人は、言葉の並びとか私の性格を勘案して、「なるほど、具体的に数字を使うといいということを言いたいのだが」とか思いがちである。でも、冷静に考えてほしい。ゾウの体長が2メートルくらいだとかウンコのサイズが10キロあるとか聞いて、それは「ゾウらしさ」を表しているだろうか? もっと、端的に、ゾウの「ゾウみ」をびしっと言い表す表現がほかにあるのではないか?

あーもういっそ写真撮って送れ! みたいな話にもなるだろう。でも、ゾウを実際に見るのと、写真で知った気になるのとは、だいぶ違うよな……という肌感については、みなさんも「それはそう(ゾウだけに)」と納得していただけるのではないかと思う。

細胞を表現するというのも同じことなのだ。核が大きくてクロマチンが濃いからA病です、みたいな説明を我々はたまにする。でも、そういう表現で本当に「A病み」が伝わるだろうか。

いいよ別に、伝わらなくても、A病であることさえ教えてくれたら、というのが一般的な主治医や患者の感覚だ。でもさあ。でもさあ。わかったほうが、いいじゃんよ。

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