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たくさん仕事があるときには、何も考えずにひたすら自分の左前方にマッペ(プレパラートを置く板)を積み、黙々と顕微鏡を見ていけば少しずつでも着実に仕事は終わっていくので、じつはあまり困らないというか、精神的にはわりとらくである。
問題は仕事が一段落したときだ。自分を高いところから俯瞰すれば一年後とか二年後とかに向けてやっておくべきことは山程ある。しかしさすがに今日ここでいきなり年単位でやるべき仕事に取りかからなくてもいいかなと、少し甘えてしまう。それではたとえば四ヶ月後に予定されている仕事の準備なら喜んでやるかというとこれもまた微妙で、直前になって情報が揃わないと最後まで完遂できないタイプの仕事を途中まで仕上げていくことに意味はあるのだけれど、わかっているのだけれど、「なんだかおっくう」という理由であまり取り組む気がしない。
あらゆる仕事はベルトコンベアのように順次運ばれてくることで「しかたなく」こなしていくという側面がある。それは私がやりたくてしょうがない大好きな仕事であっても一緒だ。ベルトコンベアをへたに止められてしまうと、次の仕事をはじめるためには自分で仕事に歩み寄って、つまり自分と仕事との距離を自分で詰めなければいけなくて、これがけっこうめんどうなのであった。ウィーン。