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ようやくパワポができた。4ヶ月後の学会で講演するためのもの。
……なんてことを書いていると、最近の勤め人たちは、「パワポなんか使うの?」と、ちょっとほほえみながら指摘してくる。
「トヨタの社長みたいに身振り手振りで明るく講演したほうがウケがいいし、プレゼンつくる手間もいらないんだから、いっぺん写真なしでやってみたら?」みたいなことを言う。
うーん。なるほど。それができたらすごいよね。でも、それって可能なのかな。
病理医が細胞の写真を出さずに講演する、ってありえるかな。
本人や、本人の所属しているチームや、そのチームが作っている製品を売り込みたいんならいいと思うんだけどさ。スティーブ・ジョブスみたいに。
あるいは、聞く人たちの頭のなかにそれぞれの体験を思い出させて、イメージをたくさん喚起するのが目的だっていうなら、ありえるのかもしれないけどさ。精神科医とか臨床心理士なら、あるいは。
でも私が、病理医がやる講演ってのは、みんなが普段目にすることのないミクロの姿を見てもらって、それが、みんなが日頃から目にしているマクロの現象と、どう関わっているかを示すことだからなあ。
みんなも絵を見たがっているし、私も絵を出したいんだよな。だからパワポは便利だ。
にしても、だとしたら、なおさら、私はここ以外にも、これまでずいぶんとブログで病理の話を書いてきたんだけど、あれはいったい、誰に何を届けるためのものだったのかと思う。
自分にはずいぶんいっぱい届いたけどな。配送先が自分だったから続いたのかもしれないな。