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わからないわからない。どうしてもわからない。わからない診断がある。たくさんの手を打った。多重の免疫組織化学も行った。同僚の病理医にもたずねた。主治医とは何度も話をしている。
それでもわからない。疾患Aと疾患Bで迷っている。しかしじつはこのA vs Bという構図がそもそも間違っている可能性があると感じている。「感じている」というのが悲しい。考えているのではない。危険な波動を肌が受信している、みたいなイメージなのだ。言語化できないところにたくさんのブレーキがあって、しかもそれがフットブレーキではなくてサイドブレーキ程度、というかエンジンブレーキだ。勾配のきつい下りの坂道を、ずるずる、だらだら、下っている。低速のギアでパワーを高めてなんとかしがみつこうとしている。
コンサルテーションをする。この領域で有名な、国内の有名病理医に、プレパラートをご覧いただきご意見をおうかがいできれば幸いですとメールをおくる。
患者のためだ。主治医のためだ。しかしまあほんとすごい敗北感だ。敗北感というか焦燥感というか、こういう診断を出せないのだったらなぜ病理医を自称しているのかという存在の証明にかかわる部分でほんとうに悔しいなと思う。
またこの病理医がすごくいい人で、やさしく解説してくれるので、それがまた、人としての大きさの違いを感じてうずくまってしまう。まだまだ勉強しないとだめだなあ。
