17|10
秋の講演の準備をしている。
私のやる学術講演は、ほかの医者のとはだいぶ違っていると思う。
臨床医はたいてい、最新のデータを用いて、最新のプラクティスについて語ることが多い。これまでたくさんの講演を聞いてきたが、「学会発表」にすごく似ているなあと思う。データドリブン、エビデンスベーストの姿勢が美しい。
一方で、病理医の講演というのは「古いこと」を語ることが多い。より細かいことをいうと、「古くから一部のマニアにだけ知られていたことを、新しい人たちのためにアレンジして語り直す」みたいな作業になる。
つまり私の講演は、学会発表というより教科書的なのだ。それも、オーセンティックな医学書というより、中学校や高校で買わされた「国語便覧」とか「資料集」のたぐいに似ている。
……などというとかっこつけすぎか。
お前の講演なんてエッセイじゃねぇか、と言われる可能性も、あるにはある。