ライバル待望論

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問い合わせ、カンファレンス、電話、電話、対面での相談。放射線科医の来訪。めずらしい。病理に放射線科医。あ、めずらしくもないのかな? いや、めずらしいだろう。

用件は「昨日の話の続き」。講演準備のためにデスクに積み上がったマッペを横に避けて、ふたりでDICOM画像を見ながら、ああでもないこうでもないとディスカッションをする。

「昨日の話」。

当院では、研修医が学会発表をする前に「予行演習」をするのだけれど、このとき、指導医とか所属科といった縦割りのしばりを乗り越えて、さまざまな科の上級医たちが予行に駆けつけてくれる。昨日まさにその予行が行われた。初期研修医のひとりが北海道内の学会で全身感染症の剖検例に関する発表をするのだが、これに、外科医、血液内科医、リウマチ・膠原病内科医、化学療法内科医、脳神経内科医などが聞いてコメントをしてくれる。私なんぞはそういう風景を見ているととっても贅沢でめちゃくちゃありがたいと思うのだけれどいまどきの研修医たちはこれが当然という環境で育っているわけで、いや、ありがたがってほしいというのではない、いいことだよなと感じるだけのことである。で、その予行で、気鋭の放射線科医と私とが病態についてあれこれ議論を戦わせたのだが、私が次の会議の予定で中座したので話が途中になってしまった。だから続きをやりましょう、ということでわざわざ来てくれたわけである。いまどき熱い男だ。

餅は餅屋、CTはCT屋、病理は病理屋と言ってしまえばそれまでだけれど、私が放射線画像について詳しくなったほうがたぶん病理診断は鋭くなるし、放射線科医が病理組織像に詳しくなるほうがたぶん画像診断の精度も高まるだろう。事実、放射線科医の中には、病理の大学院講座で学位を取得する人もそれなりにいる。とはいえ、市中病院で放射線科医がこうして病理の部屋をわざわざ訪れてくれるというのは本人の熱意によるところが大きい。逆に言えば私も日頃から放射線診断室を訪れるべきなのである。

先週から作っていた講演のプレゼンが9割がた完成した。さあ帰ろう、というところでふと思い出して、週末の研究会で提示される病理解説のおさらいをしておく。私はいつもプレゼンを早め早めに作るせいで、いざ、当日になると何を作ったか忘れてしまっていて、自分のパワーポイントファイルを見ながら「おっ、なかなかファンキーな画像の並びだな」みたいなことを人ごとのように口にしたりするので聴衆にあきれられている。ちゃんと予行しておこう。本当は私の病理解説を、あの研修医がやったように、ほかのドクターたちにあらかじめチェックしてもらうのが一番いいのだけれど、今の私に病理解説プレゼンで意見をできる人はだんだん少なくなってしまっていて、予行もままならない。その意味でもさっきの放射線科医はありがたかったな。ちゃんと意見してくれるんだもんな。

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