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死んで花実が咲くものと

2|18 ここから3か月の間に、CPCという会議を3回やることになった。それぞれ、剖検、すなわち病理解剖の結果を報告する。 ひとりはがん。ふたりはがんではない病気で、亡くなった。 病理解剖は、主治医や患者が病と歩むにあたってなにか「解せない...
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がんというとても特別な病気について

14|12 がんとは特殊な病気だろうか? 少なくとも私は、小さいころから、わりとそう思っていた。 今でも、がんという言葉にはかなり強い圧があると感じる。ほかの病気とは違う、絶対的な圧が。 最初にがんの圧を浴びたのは小学校のころだ。 私は札幌...
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採点の祭典

2|0 今日はなんかもうとにかくやっちゃいてぇなあ! と思ったので、看護学校の病理学試験の祭典をやっちゃうことにする。記述式の回答用紙にコメントを書きながら点を付けていくので時間がかかる。仕事の合間にちまちまやっていると軽く3週間くらい経っ...
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それは結局そういうことなのだ

6|15 生まれたばかりの赤ちゃんの、消化管の顕微鏡像がどんなかんじなのか。教科書をひもといて調べている。べつに趣味でやっているわけではない。仕事の一貫だ。 病理診断をやるうえで、正常と異常とを見分けるのは大事なことである。正常といってもい...
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単一食品で健康になれたらいいですね

11|8 少し集中しようと思うと迅速組織診のオーダーが入る。顔をつけていた洗面器からプハァと離れて別の場所にあるユニットバスにタタッと走ってドボンと潜ってしばらくそっちで集中して終わったらザブァと出てまた走って戻ってきてもとの洗面器にタポと...
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タマの声優のクエスチョンが外れる日

2|2 医療経済的に今日の私は病院にほとんど収益をもたらしていない。もたらしていないというかたぶんマイナスである。病理学的な検索にかかるお金と、患者や国からいただけるお金をてんびんにかけると、病理の場合は基本的に赤字だ。黒字にする努力をしな...
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あんたも珍獣

22|11 「立ち会い切り出し」という仕事がある。立ち会うのは外科医。切り出すのは私。 外科医が手術でとってきた検体を、病理医である私がナイフで切る。私は病変を確認し、どの部分を顕微鏡標本にしたら診断がスムーズに進むかを考えて、組織を切り出...
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抜き足差し足の誇り

6|2 10日間で10回飛行機に乗った。ただしこのうち日帰りが2回あったので、毎日乗っていたわけではない。しかしそれにしてもずいぶんとデスクを空けた。おかげで仕事の進捗を確保するために早朝や深夜の勤務が続いている。では体はズタボロかというと...
インタビュー

尾阪咲弥花先生に会う

0|0 早朝の高速道路を制限速度より10キロ遅いくらいでゆっくり走る。手袋の中がいつまでも冷たい。太陽の位置が低くて顔の下半分がとろ火で焼かれているのに車内の温度はなかなか上がらない。新千歳空港の駐車場に車を停め、ロビーに入るまでのわずかな...
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AIが毛穴を消したグラビアが嫌いだと言っていた人がいた

34|13 猛烈に働いたがまだ夕方である。まあなんかそういう日もある。 何度も何度も切り直してもらって何枚もプレパラートを作ってもらって、たくさん面を変えてなんとか癌と診断したい標本があったのだが、どうも嫌な予感がして癌と付けきれなかった。...