誰何ゲーム

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階下のローソンで会った某科の医者に「おー、最近なんか変な症例ばっかり出るよなあー」と声をかけられる。そういうことがたまにある。臨床医たちが私の顔を見て「おー」となるのは、その変な症例の病理診断を私が出しているからであろう。臨床医があらかじめ目星をつけていた診断とは違う病理報告書を返せば、当然、その症例の記憶は私の顔といっしょに残る。

予想外、へんてこ、稀、難解。そういった症例のときほど臨床医は病理医を気にする。だから、次第に、病理医そのものも、予想外でへんてこで稀で難解だと思われがちだ。ほんとうはそんなことはない。単なる混同である。まったくしょうがないな。

会議と会議のあいまにスイカゲームをする。いつまでもダブルスイカが達成できない。

これは染まるだろうと思った免疫組織化学がいっこうに染まらない。「抑え」でオーダーしておいた染色だけが陽性になったりする。絨毯爆撃的染色結果の端っこにだけ意味が生じている状況に苦笑する。もっとちゃんと、最初から読み込んでいたら、この診断をピンポイントで付けることができただろうか。予想外を予想する。へんてこについていく。稀によくある。難解を粉砕する。そういう診断ができればいいと思うが、できない。やりがいがないといえばうそになるがあるといってもうそになる。

これはやりがいでやっている仕事ではないのだ。

いやスイカゲームの話。

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