「できれば毎日一度はチェックしたほうがいいです」

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品質マネジメントシステム(QMS)に、毎日一度はログインして、なにか情報がないかをチェックしたほうがいいと告げられた。なるほど、メモをとる。PCのスタートアップ(起動時に自動的にアプリを立ち上げるしくみ)のようなものか、と思う。翌日、電子カルテ上にもメールが届くときがあるので注意してください、できれば毎日この欄には気を配っておいたほうがいいです、と告げられた。なるほど、とメモをとる。

チェックリストが増えていく。今までもさんざんこの世界で働いてきたはずなのだが、職場が変わるとこれほど変わるものかとしばしば驚く。そして、チェックリストの抜けや漏れを気にしているうちに、患者から疾病へと、疾病から分類へと、自分の見る対象が、なだれをうつようにマルチョイ型の思考に飲み込まれていくように感じる。

チェックリスト思考は、「複雑なものをデジタルで扱うため、世界を簡略化していくことからは逃げられないから、せめて、デジタルで書き入れる項目の数を増やして、少しでもアナログな雰囲気を取りこぼさないようにしよう」という次善の策のように思える。それがいいとは誰も思っていないはずだ。でも、こうしないとだめだとみんな思っている。そうやって回っている。そうやって回している人たちの中で「病気」が語られていく。「がん」が語られていく。

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