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ありとあらゆる偉い医者が、「いい医者になるにはどういう勉強をしたらいいですか」とたずねると、「そら コミュニケーションよ」と言うのがおもしろい。ありとあらゆる、である。内科、外科、放射線科、病理。医療系の新聞記者とか情報発信者なんかも含めてみんな「コミュニケーションよ」と言うのである。ほんっとうに実感がそうなんだろう。でも、私はあまのじゃくなので、こうやって答えてくれた人はみんな、学生のころや、働きはじめのころに、「コミュニケーション不全」に困ったんじゃないかな、この人たち本当はみんな、いわゆる「コミュ障」出身で、でもそれをコミュニケーション以外の方法と、たどたどしいコミュニケーションの「乗り切り」でなんとか克服してきたんじゃないかな、だから人生のあちこちで、「がんばったコミュニケーション」や、「しんどかったコミュニケーション」のことばかり思い出す、それが、後進の人びとに対する、「そら コミュニケーションよ」の一言に結実しているのではないか、という気がした。
本当にコミュニケーションが上手な人って、仕事のコツをコミュニケーションですって言わない。「元気でいることです」とか言う。槙野智章とかまさにそうだろう。彼みたいなコミュニケーションおばけ、「成功の秘訣はなんですか?」とたずねても、たぶんコミュニケーションだとは言わないと思う。当たり前のことだが、人は得てして、自分の最大のストロングポイントを人にすすめることはしないのだ。もともと引け目だったからこそ、今、「がんばってそこを手に入れようぜ」と言えるのだと思う。