22|12
ぞっとするような話だが、めちゃくちゃ珍しい病気をひとたび病理診断すると、その数ヶ月以内、というか数週間以内に、まったく同じ病気に遭遇する、みたいなことが、よくある。
これを、「続くものだなあ」と平和に解釈してもいい。しかし、あることに気づくと「ぞっとする」。
珍しい診断をしたことで、自分の中でその病気に対する「理解力」があがり、これまで見逃していたその病気を診断できるようになり、それでまた新たに同じ病気を見つけられた、そういうことなのではないか……と気づくのだ。
だとすると。その病気に気付かないでいたこれまでの何年か、十何年か、あるいは何十年か、私はその珍しい病気を、見逃し続けてきたということになるではないか。
冗談ではなく、私はこのことを思って、本当に眠れなくなる夜があった。
しかし今はまたちょっと違う考えに至っている。10年以上前にいちどだけ診断した、とてもめずらしい病気を、ある短い期間のうちにたてつづけに4例ほど診断するということがあった。この間、私は、「次にこの病気に出会ったら必ず一直線に診断してやる!」という強い思いを持ち続けてきた(自称)。だから、「たまたま珍しい病気に出会って、短期的にactivateされて、その病気が診断できるようなブーストがかかった」というわけではなかったと思うのである。
なにがいいたいか。
「珍しい病気に、短期のうちに立て続けに出会うことは、ある」
ということである。あんまり勝手によけいなストーリーを想起しないほうがいい。出会うときは出会う。出会わないときは出会わない。ただそれだけのことなのかもしれない。

