職務はいつも、念入りなかんじで、念を込めて

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相談を受ける。「大腸生検で、こういう細胞集塊が出てきたときに、毎回PAS出してますか? 毎回アメーバを疑うべきかっていう話なんですけど……。私はいちおう、毎回PAS出すんですけど、めったに当たらないというか、ほとんどはスカで、もしかしたらこれ、気にしすぎなのかなって思ったりもするんですが……。先生だったら、毎回チェックしますか?」

これに対して、マンガ「フラジャイル」のように、「大事なのは主治医が心を折らないことだ。」と返して、検出の確率は低いが当たったときにとても役に立つ検査を毎回ちゃんとオーダーすることの必要性を述べるのが、一般的な指導医としてのやりかただと思う。

ただ、それだけだとつまらないというか、実践的なレベルには達していないとも思ったので、「そもそも先生がこの所見でアメーバを疑うべきかどうかをきちんと考えましょう」という話を15分くらいした。これこれこのような腸炎のとき、表層上皮には粘液化生が生じやすく、その粘液球が空間にポロとこぼれているのを、アメーバと誤認しやすいのだとしたら、背景の腸管粘膜にこういう変化があるときには、そもそもアメーバではないんじゃないかという『積極的な否定』に入ってもいいですよね。でも、でもですよ、それでも万が一のために、PAS反応をオーダーしておくことは、病理医としてはとてもいいことなんじゃないですかね。

伝わったろうか。伝わったっぽいな。頭がいい人にそうでもない人が懇切に説明をすると、頭のいいほうは勝手にいろいろ膨らませてもらえるから、助かる。

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