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私より若干若い、ある病理医が、「この病変、どう思いますか。癌Aでしょうか」と言ってプレパラートを持ってきた。私は、この優秀な病理医が言うなら99%「癌A」だろうなと思った。若い病理医と私の意見が微妙に違ったことが、これまでに何度かある。その後詳しい検討を行うと、いつもこの優秀な若い病理医の言うことが正しかった。
だから今回もおそらく「癌A」だろうなと思った。ただ、役割として、「癌B」の可能性を考えて、免疫組織化学をしましょうと進言した。
結果、どうやら、「癌B」らしい。めずらしく私の勘が当たった。
しかし、癌Aと癌Bの見分けかた、第一歩のところ、第一手目が、「勘」だというのが、私にはどうにも気に食わなくて、それから28時間くらいずっと、「なぜこの病気を癌Bであると最初から言えなかったのか」ということを考えている。