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異動にそなえて書籍を整理している。古いものは、捨てるものと、絶対に取っておくものとに分かれる。版の改訂によって古くなった成書のたぐいは基本的にとっておく。この病変、かつてはこういう呼び名だったんだな、みたいな話を、10年に1度くらい確認したくなることがあり、そういうときに使う教科書はたいてい40年とか50年前に執筆されたものであることが多い。骨董品みたいな教科書の中に眠っておる億万の専門用語のどれかひとつを探して何時間も図書館を掘り進む、みたいなことを経験すると、どんな古い教科書もおいそれとは捨てられなくなる。病変命名の理由とかが書いてあることもある。かさばるけど捨てられない。本を抱えてまごまごしている姿こそが病理医の本質的な自画像でありうる。知新に温故が先行しないということはない。